コウモリが媒介する主な病原菌
コウモリは、感染症の原因となる病原体を数多く保有していることで知られています。
感染後の致死率が非常に高い病原菌や、重篤な後遺症が残るおそれがある病原菌を保有している場合もあり大変危険です。具体的にはどのような病原菌に感染するリスクがあるのか、詳しく解説します。
SARS(重症急性呼吸器症候群)
SARSとは、SARSコロナウイルスを原因とする感染症です。SARSコロナウイルスの自然宿主は、キクガシラコウモリであると考えられています。
感染後は初期症状として発熱、悪寒、筋肉痛などのインフルエンザに似た症状が、第2週目になると咳や呼吸困難などの肺炎の症状が生じます。
なお、発症者の約10~20%はARDS(急性呼吸窮迫症候群)に進行するといわれています。ARDSを発症すると死に至るリスクがあるため、集中治療が必要です。
参考:国立健康危機管理研究機構「SARS(重症急性呼吸器症候群)」
エボラウイルス
エボラウイルスとは、エボラウイルス病(エボラ出血熱)の原因となるウイルスです。自然宿主はコウモリだと考えられていますが、感染した人間からうつるケースもあり、大流行が起こることがあります。
エボラウイルス病の主な症状は発熱や倦怠感などです。進行すると嘔吐や下痢などの症状が現れます。また、重症化すると出血傾向(止血困難や大量出血など)や肝機能・腎機能の異常、意識障害などが起こる場合があります。
発症後の致死率は約50%ですが、医療レベルによっては約90%に達することもある危険なウイルスです。
参考:厚生労働省検疫所「エボラウイルス病(Ebola virus disease)」
狂犬病ウイルス
狂犬病ウイルスとは、狂犬病の原因となるウイルスです。犬に咬まれて感染するイメージが強いですが、コウモリや猫から感染するケースもあります。
狂犬病を発症すると、発熱や頭痛などの風邪のような症状が出た後に、興奮、幻覚、錯乱などの症状が現れます。発症後の治療法は存在せず、致死率はほぼ100%といわれています。
参考:国立健康危機管理研究機構「狂犬病」
リッサウイルス
リッサウイルスとは、リッサウイルス感染症の原因となるウイルスです。野生のコウモリの唾液などに含まれていて、コウモリに咬まれる、傷口を舐められるなどすると感染します。
発症後の症状は発熱や頭痛、倦怠感、興奮、錯乱など狂犬病とよく似ており、症状だけでリッサウイルス感染症と狂犬病を見分けるのは困難です。発症後の有効な治療法はなく、患者の多くが発症後1か月ほどで死亡するといわれています。
参考:厚生労働省 関西空港検疫所「リッサウイルス感染症」
ハンタウイルス
ハンタウイルスとは、ハンタウイルス感染症の原因となるウイルスです。ハンタウイルスを保有するネズミやコウモリなどの糞尿に触れたり、糞尿で汚染されたホコリを吸い込んだりすることで感染します。
ハンタウイルス感染症には、重症化した場合に腎機能障害を引き起こす「腎症候性出血熱(HFRS)」と、呼吸困難などが起こる「ハンタウイルス肺症候群(HPS)」があります。それぞれに共通する症状は、発熱や頭痛、嘔吐などです。
HFRSの致死率は5~15%、HPSの致死率は35~50%であり、重症化を防ぐためにも速やかに治療する必要があります。
参考:
東京都感染症情報センター「(16)腎症候性出血熱(HFRS)」
厚生労働省検疫所「2013年10月18日更新 アメリカ大陸におけるハンタウイルス肺症候群の発生状況について」
ヘンドラウイルス
ヘンドラウイルスとは、ヘンドラウイルス感染症の原因となるウイルスです。自然宿主はオオコウモリで、ヘンドラウイルスに感染した馬の体液や排泄物から人間に感染するといわれています。
発症後は発熱、筋肉痛などのインフルエンザ様症状のほか、重篤な肺炎や脳炎などが現れる場合もあります。発症が確認された患者7人中4人が死に至っている、致死率が高い病気です。
参考:東京都感染症情報センター「(32)ヘンドラウイルス感染症」
ニパウイルス
ニパウイルスとは、ニパウイルス感染症の原因となるウイルスです。自然宿主はオオコウモリですが、ニパウイルスに感染した豚を媒介して人間に感染したり、人間同士で感染したりしたケースもあります。
発症後は、発熱や筋肉痛などのインフルエンザ様症状が現れるのが一般的です。その後、めまいや意識障害、神経症状などの症状が出て、脳炎を起こす場合があります。
さらに重篤な呼吸器障害やてんかん発作が現れることもあり、致死率は約40~75%とされています。
参考:厚生労働省検疫所「ニパウイルス感染症 – バングラデシュ人民共和国」
アルボウイルス
アルボウイルスとは、アルボウイルス感染症の原因となるウイルスです。アルボウイルスを保有するコウモリを刺したダニが、人間を刺すことで感染します。
また、アルボウイルスは250種類以上存在し、マダニやサシチョウバエ経由で感染するものもあります。
アルボウイルスは、感染しても無症状で終わるケースが多いのが特徴です。しかし、発熱や関節痛、発疹、リンパ節の腫れなど、インフルエンザと同じような症状が出ることもあります。また、感染したアルボウイルスの種類によっては、脳炎や髄膜炎などを引き起こす場合もあります。
ヒストプラスマ菌
ヒストプラスマ菌は、ヒストプラスマ症の原因となる真菌です。ヒストプラスマ菌を含むコウモリや鳥の糞尿に触る、糞尿で汚染されたホコリを吸引するなどして感染します。
感染後、無症状で終わる方もいれば、発熱や悪寒、頭痛などの症状が出る方もいます。肺や免疫に疾患を抱えている方は、重症化しやすいため注意が必要です。
レプトスピラ菌
レプトスピラ菌(病原性レプトスピラ)は、レプトスピラ症の原因となる細菌です。オオコウモリのほか、犬や猫、牛、馬、げっ歯類など多くの哺乳類が保有しており、これらの動物の糞尿で汚染された水や土壌を介して感染します。
レプトスピラ症を発症すると、発熱や頭痛、筋肉痛、消化器症状などが現れます。また、重症化すると肝不全、腎不全、心不全などさまざまな臓器に症状が出るのが特徴です。重症化した場合の致死率は5~20%とされています。
参考:日本感染症学会「レプトスピラ症(Leptospirosis)」
サルモネラ菌
サルモネラ菌とは、サルモネラ感染症の原因となる細菌です。自然界のさまざまな場所に存在し、ペットや鳥類、爬虫類など多くの動物が保有しています。
コウモリの場合は、フンや死骸に多く含まれている傾向にあり、これらに触れるなどすると感染するリスクがあります。
感染後は腹痛や下痢、胃腸炎、高熱などの症状が現れるのが一般的です。子どもや高齢者は重症化しやすく、脱水症状や意識障害、菌血症などが引き起こされることもあります。
コウモリとの接触による感染のリスク
コウモリと接触すると、上記で解説した病原菌に感染するリスクがあるため、コウモリとの接触は避ける必要があります。
注意したいのが、「接触」が単純にコウモリの体に触ることだけを指しているわけではない点です。病原菌に感染するリスクを減らすためにも、何が「接触」に当たるのかを把握しておきましょう。
咬傷やひっかき傷
コウモリに咬まれたりひっかかれたりすることは、「接触」に該当します。狂犬病やリッサウイルス感染症など、致死率が高い危険な病気に感染するおそれがあるため、攻撃を受けないようにしましょう。
排泄物との接触
コウモリの排泄物や唾液に触れるのもNGです。アルボウイルスやヒストプラスマ菌などに感染するおそれがあります。
空気感染
コウモリが棲みついている場所で過ごすのも良くありません。コウモリやその糞尿に直接接触しなくても、フンに汚染されたホコリでヒストプラスマ菌などに空気感染することがあります。
コウモリとの接触を避けるための対策
コウモリに触れたり攻撃を受けたりすると病気に感染するおそれがあるため、そもそもコウモリに近づかないことが重要です。
また、家に棲みつかれると空気感染のリスクも上がるため、軒下や屋根裏に続く隙間をパテや網などで塞ぎ、侵入を防止しましょう。ハッカ油や蚊取り線香などの、コウモリが苦手なニオイを撒くのも有効です。
すでに棲みつかれている場合は早急に駆除する必要がありますが、コウモリは鳥獣保護法の保護対象であるため、許可なく捕獲・殺傷してはいけません。忌避剤を使うなどして、追い出すことに留め、専門業者への相談を検討しましょう。
コウモリを追い出すときは、素手で触ったり、排泄物や唾液に触れたりしないように注意してください。
万が一、コウモリから攻撃を受けて怪我をしてしまった場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。また、攻撃は受けていないものの、糞尿に触れたなどで感染のおそれがある場合も医師に相談することをおすすめします。
コウモリの巣を見つけたときの対処法について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
「コウモリの巣を見つけたときの対処法!起こりうる被害とは?」
コウモリの被害にお悩みの方は防除研究所にご相談ください
コウモリが保有する病原菌には空気感染するものもあるため、健康被害を防ぐには、コウモリのいない環境づくりが重要です。
しかし、家に棲みついたコウモリを追い出すのは大変で、駆除作業中に病原菌に感染したり、鳥獣保護法違反になってしまったりするリスクがあります。
コウモリの被害を根本から解決するには、自力で何とかしようとするよりも、専門的な知識と技術をもつプロの業者に依頼するのがおすすめです。
防除研究所では、民家に棲みついたコウモリをはじめ、さまざまな害獣・害虫駆除を行っています。年間約3,000件の施工実績を誇り、豊富な経験に基づいた対応が可能です。
建物の構造や被害状況を詳しく調査し、侵入経路を特定した上で効果的な施工方法をご提案
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法的な制約や健康リスクを考慮した、安全で確実な駆除作業を実施
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まとめ
コウモリは数多くの病原菌を保有しており、体や糞尿に触れると病気になるおそれがあります。空気感染する病原菌を媒介することもあるため、コウモリに接触しないのはもちろん、家にコウモリが棲みつかないようにすることが重要です。
また、コウモリの侵入を防止するためにも、コウモリが嫌うニオイを撒いたり、侵入口を塞いだりしておきましょう。すでに棲みついてしまっている場合、自力での駆除は危険を伴うため、専門の業者に依頼することを検討してみてください。