鳥獣ニュースより

野生化したアライグマが県内で生息域を広げているとして、県は第3次アライグマ防除実施計画(素案)をまとめた。10年前にはあまり見られなかった県央や県西部地域でも目撃や捕獲が相次いでおり、来年4月から5年間の計画期間で生息域の縮小と個体数の減少を目指す。 (原昌志)

 県自然環境保全課によると、県内のアライグマ捕獲数は、第一次防除計画が始まった二〇〇六年度の千八百九十七匹がピーク。翌年度からは約千?千四百匹で推移している。

 わなの設置数などによって捕獲数は変動するが、わなの数に対して何匹捕獲したかを示す「捕獲効率」は下がっており、「生息密度は低下」(担当者)と推測できるという。この効率は県平均で一〇年度が一・二四、一四年度は〇・六五。特に当初、農業被害が目立った三浦半島では捕獲に力を入れ、一・八三が〇・七一まで低下した。

 一方、捕獲・目撃の地点は〇六?一〇年度には三浦半島や横浜、藤沢市が中心だったが、一一?一四年度は相模原や厚木、平塚市などに拡大している。捕獲数を〇六年度と一四年度で比べると、相模原市(合併前の郡部を含む)は四十五匹から百九十五匹に、平塚市が六匹から五十四匹に増えている。

 県は生息域拡大の理由について、捕獲は農地や住宅周辺など被害が出やすい場所に偏っているなどと分析。市街地付近の緑地には手が回らないため個体数の劇的な減少につながらず、移動しているとみる。三次計画素案では、生息域をより詳細に把握するため、緑地保全団体や公園利用者らに目撃情報を募るほか、足跡や爪痕の痕跡調査などを盛り込んだ。県境を越えた分布拡大も懸念され、近隣都県との情報交換も行う。

 担当者は「かわいらしい姿なので餌づけする人もいるが、外来生物でありさまざまな悪影響がある。最終的には県全域からの完全排除を目指す」とする。素案は県のウェブサイトや県政情報センターなどで公開し、十一月十三日まで県民意見を受け付けている。

 <アライグマ> 北米原産で、1970年代後半に放映されたアニメ番組の影響もありペットとして人気を集めた。しかし逃げたり捨てられた個体が野生化し、県内では98年ごろから農作物を食べたり、家屋の屋根裏にすみ着いてふん尿被害を起こすなど問題化。希少生物を捕食し、生態系を壊す危険性も指摘されている。中南米原産のカニクイアライグマもいる。防除は2006年度から第1次計画がスタート、11年度から現行の第2次計画に引き継がれた。