(1)種類と生態

アリ類はハチ目(膜翅目)に属する社会性昆虫である。女王アリ、雄アリ、働きアリ、兵アリの階級分化がある。日本からは約270種が知られている。ほとんどが野外性であるが、家屋やビルに浸入してくることもある。建築物内等に生息している代表種はイエヒメアリである。外国からの移入種で、全国に分布を広げている。体は黄褐色、働きアリの体は2.0から2.5mmである。巣はカーペットの下、机、壁の割れ目等あらゆる場所に作られ昼夜を問わず活動し、砂糖や菓子等食品に群がる。特定外来生物に生態系に係わる被害の防止に関する法律(外来生物法)で特定外来生物に指定されているアルゼンチンアリは、働きアリの体長が約2.5mmの小型の蟻である。本来の生息地であるアルゼンチンアリから荷物や人の移動に伴い交通機関により世界中に分布を広げている。わが国では、1993年に広島県で見つかり、以後各地に広がっている。巣は石下、倒木下、コンクリート壁の隙間、家屋の壁の隙間などあらゆるところに巣をつくり、活発に活動して屋内にも侵入して餌を探す。雑食性で砂糖や花の蜜、果物などを好む。餌を見つけるとすぐに巣に知らせ、働きアリが一斉に餌に集まるので、室内に餌となるものをいつまでも放置しないことが重要である。

(2)防除法

アリ類の防除対策には、ヒドラメチルノンやホウ酸などを有効成分とした食毒剤が有効である。これらの食毒剤は働きアリによって巣に運ばれて、巣全体の蟻を滅ぼす効果がある。このような食毒剤は食品に集まるような種類の蟻に対して効果がある。速効性を期待するのであれば、有機リン系剤やピレスロイド系剤の残留処理を行えばよい。侵入経路にピレスロイド系剤や忌避剤(ディート)を処理すると侵入防止になる。なお、アルゼンチンアリに対しては、数が膨大なため食毒剤では対応できない場合があり、フィピロニルを有効成分とする製剤(巣の行列などに直接処理する液剤)が開発され、市販されている。この剤は他の蟻にも利用できる。